接客力の向上を目的とした研修にロールプレイングを取り入れる事は、研修の成果を大きく高めます。
実際にサービス業を中心に多くの企業で接客ロールプレイング研修は実施されており、接客力向上に欠かせない研修手段として認知されています。
そんな接客ロールプレイングについて、
- メリットとデメリット
- やり方やコツ
- シナリオの作り方
- お客様役の重要性
以上の4点を中心に詳しく説明していきたいと思います。
2013年から現在まで数多くのお客様役育成に携わり、さらに年間2,000件の接客ロールプレイング研修に携わっている筆者の経験をもとにまとめた内容になっているので、是非、参考にしてください。
接客ロールプレイングとは?
まず、接客ロールプレイングとはどういったものか、確認しておきましょう。
接客ロールプレイングとは、接客の疑似体験をして販売店員の接客力を向上させる方法です。
接客ロープレイングは、お客様役を設けて行います。そのお客様役を相手に接客練習を行うことで、研修とは言え実際にお客様と向かい合っているような接客体験をする事ができます。
接客力は机上で学ぶだけでは身に付ける事は難しい技術です。接客ロールプレイングでは実際に体感する事で身に付ける事ができる為、効果的な接客研修方法として、昨今、注目を集めています。
接客ロールプレイングの効果
接客ロールプレイングにはどのような効果があるのか、そのメリットとデメリットに分けて、見ていきましょう。
接客ロールプレイングのメリット
接客ロールプレイングには7つのメリットが挙げられます。
1.実践形式で学ぶので接客力向上のスピードが何より速い
実践に勝る成長の場はありません。接客ロールプレイングでは、実践の場に近い形で研修を行える為、より速く接客力の向上が見込めます。
2.体感する事でしっかりと身に付く
座学で資料を読んだり説明を受けたりして知識を付けるだけではなく、実際にその内容を体感する事により、心と体にしっかりと身に付ける事ができます。
3.他の研修参加者を見ることでも学べる
他の研修参加者が接客ロールプレイングをやっている所を見る事でも多くのシチュエーション事例を学ぶことができ、また、より良い接客の気付きを得る事もできます。
4.会社全体として向かう接客の方向性を共有できる
接客ロールプレイングは形として見えやすい研修です。その為、グループや販売店、企業単位で研修に参加することで、全体の接客力の底上げや、問題点を共有し、企業の向かう接客の方向性を共通一致させる事も可能になります。
5.PDCAサイクルを回して短時間での接客改善も可能になる
実際の店舗での接客と違い、接客ロールプレイングは研修です。何度でも繰り返し同じシチュエーションの接客を体感する事ができます。PDCAサイクルを回しながらロールプレイングを繰り返すことで、短時間で接客の改善が可能になります。
6.いろいろなお客様相手の接客を体験できる
店舗に訪れるお客様にはいろいろな方がいます。お客様によって、性格も違えば、そのお店に求めている事も違います。接客ロールプレイングでは、お客様役のシチュエーションにバリエーションを持たせることで、いろいろな接客体験が可能になります。
7.各販売員の特徴を把握できる
撮影しながら接客ロールプレイングを行うことで、各販売員の悩みや懸念、苦手な部分や得意な部分をご自身で見て把握することができます。また、参加者1人1人にしっかりとフィードバックも行うので、長所を伸ばし短所を改善。参加者全員が研修成果を高めることが可能です。
接客ロールプレイングのデメリット
メリットの多い接客ロールプレイングですが、デメリットもあります。
1.参加人数が多いと研修に時間がかかる
1回の接客ロールプレイングには最低でも5分はかかる為、研修参加人数が多い場合は、その分、研修時間も長くなってきます。
お客様役を増やしたり、ロールプレイングを見ている間も、その接客の良い点、悪い点を挙げるなど、研修全体を工夫する事で効率を良くするのがおすすめです。
2.事前に接客ロールプレイング研修の内容を吟味する必要がある
各企業、店舗により、お客様像や接客の改善点、研修の目的は異なります。その為、単に型にはまった接客ロールプレイング研修を行ってもより良い成果を得る事はできません。
他の研修以上に、研修担当者は事前のヒアリングや打合せを行い、接客ロールプレイングの研修内容を吟味する必要があります。
接客ロールプレイングにより向いている職種
接客ロールプレイングは、アパレル業、飲食業、物販業、エンターテインメント業といったお客様と対面するサービス業全般に向いている研修です。
また、直接お客様と対面はしないものの、お客様とのやり取りが中心となる電話オペレーター業務などにもおすすめです。
こういったサービス業に特に接客ロールプレイングが向いているのは、研修成果がすぐに顧客への売り上げとして反映され、効果が出やすい点が挙げられます。
接客ロールプレイングのやり方
接客ロールプレイングのやり方について、準備段階からの流れに沿って説明していきます。
接客ロールプレイングの準備
接客ロールプレイングでより良い成果を上げる為には、しっかりとした準備が欠かせません。
1.打合せ
接客ロールプレイング研修によって改善したい問題点と課題、目的を洗い出し、明確にします。
2.シチュエーションを決める
接客ロールプレイングする際の設定や扱う商品を決め、細かな資料を用意します。この資料をもとに、お客様役やシナリオを作っていきます。
3.接客ロールプレイングのシナリオを作る
どういった流れで接客ロールプレイングを行うのか、シナリオを作ります。シナリオについては、後で詳しく説明します。
4.お客様役の設定を作る
お客様役の性格や経済状況、求めているものなどの人物設定、ニーズを作り込みます。お客様役に関しても、後ほど詳しく説明します。
接客ロールプレイング研修当日
1.ルールの説明
研修参加者へロールプレイングの時間と注意点を説明します。また、各自に用意された設定や扱う商品の最終確認もします。
2.接客ロールプレイング実施
決められた制限時間の中でお客様役に対して接客ロールプレイングを行います。
主な流れは、
- お客様入店
- 接客
- お会計
- お見送り
となります。
場合によっては、研修講師が途中で止めながらロールプレイングを進めていくと効果的です。
研修参加者は、
- 間違ってもよい
- 失敗してもよい
- 上手くできなくてもよい
という意識が大事です。あくまでも研修なので、ミスを恐れず積極的にチャレンジする空気作りも成功の秘訣と言えるでしょう。
3.フィードバック
接客ロールプレイング後、気になった点、上手くできた点を参加者とお客様役の相互で意見を出し合います。その後、研修講師からもフィードバックし、接客の良かった点、良くなかった点を明確にしましょう。
接客ロールプレイングとフィードバックは時間の許す限り繰り返し行うと効果的です。何度も繰り返し体感する事で、よりしっかりと身に付ける事が可能になります。
接客ロールプレイングのコツ
接客ロールプレイングを上手く行うコツは、研修参加者が「お客様に喜んで頂きたいという気持ちをもつこと」です。
そのために販売員は接客の中で、
- お客様の発した言葉
- 言葉の言い方
- 目線
- 態度
- 動き
- 表情
これらを総合的にとらえて、お客様のニーズを把握する事が大事です。
お客様の中には自分自身でも何を求めているのか、ニーズを把握しきれていない方もいらっしゃいます。そういった、漠然としたイメージで来店されるお客様のニーズを、明確に引き出してあげるのも販売員の役割と言えます。
良い接客の大前提は、お客様のニーズが明確でも漠然としていても寄り添って「お客様の理想を満たしてあげる」その手助けをするということ。単に言葉巧みで会話の上手い販売員だけが接客上手というわけではありません。
どんなお客様に対してでも販売員が一生懸命手助けをして、お客様の理想を叶えて、お客様に心から喜んでもらえる。そしてまたこのスタッフさんに接客されたいと思って頂く、それが「上手い接客」という言葉につながります。
心から「お客様に喜んでもらいたい」という気持ちを持って接客ロールプレイングに臨むことで、スタッフさんの心の中には、お客様のニーズを把握するにはどうしたら良いか?ニーズに応える為にはどうしたら良いか?など、自身で工夫するようになり接客力が向上していきます。
研修参加者一人ひとりが「お客様に喜んで頂きたい」という気持ちを持って参加されることが接客ロールプレイングを成功させるコツです。
接客ロールプレイングのシナリオ
接客ロールプレイング研修の成功に欠かせない重要な事の一つがシナリオの設定です。
シナリオしっかりと設定しないと、形だけの研修に終わってしまいます。そうならない為のシナリオ設定のポイントについて説明します。
接客ロールプレイングのお客様設定の洗い出し
お店に合ったお客様の設定をできるだけ多く洗い出してください。お客様像や来店目的など細かく設定して、シナリオに組み込みましょう。
取り入れる課題の洗い出し
その企業や店舗の課題、問題点を事前に洗い出しておきます。そして、それをそれぞれのお客様役の設定や目的の中に解決されるように組み込みましょう。
例)
課題:お客様とのコミュニケーションを取れるようになってほしい
問題点:お客様に話しかけるのが苦手
お客様役:人懐っこい、優しい、疑問があるとすぐに尋ねることができるお客様
そこから、店員さんに引き出してもらえるように接客の流れの中で主導権を店員さんに譲る。
接客ロールプレイングの台本作り
お客様役の設定と課題、問題点を組み込んだロールプレイングの台本を作り上げます。
どういう設定のお客様役と台本なら、課題や問題を解決できるのか?
台本にある会話の内容だけではなく、動き、仕草や、話し方、目線といった感じ取る部分でもお客様のニーズ把握や、悩み、心配に気づき、気遣い、こころ配りができるか?
そういった細かなところにまで及ぶ総合的な台本を作成するのが理想です。
接客ロールプレイングにおいて重要なお客様役
接客ロールプレイング研修では、お客様役が成否の鍵を握ります。
なぜお客様役が重要なのか?
接客はいくら勉強して知識を増やしても、それだけで上達するわけではありません。
上手くなる唯一の方法は、一人でも多くのお客様を相手に接客をして、その経験から学ぶことです。
接客ロールプレイング研修のお客様役がリアルなほど、接客経験を増やすことができ、また研修ならではのフィードバックにより学びの機会も増やすことができます。
お客様役の演じ方
実際のお客様は十人十色です。また、ニーズ(何が欲しいのか?何を求めているのか?)を言葉で伝える人もいれば、表情で伝えたり、そもそもニーズがあいまいだったり、抽象的だったりと色々な人がいます。
そういった様々なお客様がいる事を意識して演じると、お客様役はより本物のお客様に近ずく事ができます。
お客様役はプロに頼むのもおすすめ
プロのお客様役は、本当のお客様と同じ顧客層とシチュエーションから作ったお客様役を演じるので、極めて実践に近い練習をすることができます。
さらに、プロのお客様役はただ買い物をするだけでなく、ニーズを質問や仕草、お客様背景、会話の仕方などの中に組み込んでいるので、お客様の要望を感じ取る感覚が研ぎ澄まされます。
また、色々なお客様役を相手に接客するので、接客の経験値も断然上がります。
是非、プロのお客様役の派遣もご検討ください。
接客ロールプレイングとは まとめ
接客の上達には、とにかく実戦形式で繰り返し経験することが大事ですが、一番のポイントは失敗しないようにしよう、うまくやろう、正しくやろうとし過ぎないことです。
もちろん実際の接客ではうまく接客していただくことが大前提ですが、研修では失敗しても良いんです。その代わりに積極的に経験して学び、身につける行動が大事になります。
接客ロールプレイングはそういった失敗を繰り返して学ぶことのできる研修です。その為、最短でのスキルアップが期待できます。
更に、その研修の成果がすぐにお客様の満足度やリピート率、売り上げとして反映されるとても有効的な方法と言えます。
是非、接客研修に接客ロールプレイングを取り入れてみて下さい。